この構成を説明すると以下のようになる。
【イオン交換膜】水素と酸素(空気)023が、イオン交換膜を挟んだ形で向き合う構成にする。
イオン交換膜はイオンを通過させる膜であるが、その見かけは台所で食べ物を包むのに使うサランーラップのような、厚さ0.5ミリメートル以下の透明なプラスチックーフィルムである。
イオン交換膜の両側には電極触媒として働くプラチナ(白金)や、プラチナールテニウム合金の微粒子を担持させた多孔質カーボン電極を付けておく。
この部分をMEA(メンブレーンーエレクトロードーアセンブリー膜電極接合体)と呼んでいる。
イオン交換膜は薄ければ抵抗が小さく、陽子が移動しやすい。
陽子が移動しやすければ出力密度が向上する。
イオン交換膜は水素と酸素(または空気)のふたつのガスを遮断する、ガスーバリア(ガス遮断)の役割をもっている。
水素と酸素が直接接触すれば危険である。
膜が薄いとガスーバリア性能が低下し、耐久性が減少し寿命が短くなる。
膜の強度を高めるために、芯材を入れる工夫が行なわれている。
イオン交換膜は適当な水分を含んでいる必要があるが、水分がないと陽子の移動が低下するからである。
イオン交換膜としては、デュポン社のナフィオン膜がよく利用されている。
現在有力なのはフッ素樹脂である。
他にも各種のイオン交換膜が研究されているが、それこそが燃料電池研究の核心である。
出力密度が大きく耐久性の高いものを開発した企業は燃料電池の世界をリードするはずであり、熾烈な競争が行なわれている。
水素が電離するわけである。
電子は外部回路へと流れる。
陽子はイオン交換膜を通って酸素極へ移動する。
酸素極では酸素と陽子が結合し、さらにこのとき外部につないだ回路からもどってきた電子が結合して結局、水ができる。
外部の回路に出ていった電子は負荷に電力として仕事をする、これが電力を外へ取り出しかことになるわけである。
燃料電池の原理を簡単に説明するのに、G卿の実験を引き合いに出すのが普通だ。
〔水の電気分解というものがあるでしょう、水に電気をかけると水素と酸素がでてきます、これが水の電気分解です。
このちょうど逆をやればいいわけです。
水素と酸素を持ってくると、電気がつくられ、水ができます〕。
この説明でわかるのであれば、それでいいのだが、ここでもう少し具体的に説明すると、次のようになる。
水素と酸素は燃焼すると大きなエネルギーを放出する。
燃焼させてそのエネルギーを利用しようとすると、内燃機関のように効率の低いものになってしまう。
そこで燃料電池は、この水素と酸素が燃焼するプロセスをふたつに分けて、それぞれの反応を独立に進行させて、エネルギーを外部へ取り出す。
すなわち一方で水素を陽子と電子に分け、この電子を外部へ取り出し、電力として仕事をさせる。
もう一方で酸素と陽子を結びつけ、仕事の終わった電子を受け取れば水ができる。
このふたつのプロセスをイオン交換膜によって分離し、陽子がイオン交換膜を通りぬけるようにする。
これが燃料電池である。
電子よりも大きな陽子がイオン交換膜を通過して、小さい電子はなぜ通過しないのかは不思議である。
この理由は電気化学の理論で説明されるが、この本の範囲を超えている。
セパレータ一それぞれのセルを仕切っているのがカーボン製のセパレータ(隔壁板)である。
英語ではハイポ上プレートといっている。
セパレータは水素と酸素(または空気)が、イオン交換膜の全面にわたって一様に接触して流れるようにする役割をもっている。
そのためセパレータには、ガスを全体にまんべんなく流すための流路が彫ってある。
溝の深さは〇・五ミリメートルほど、その幅はIから数ミリメートル程度である。
この加工はNC工作機械によるもので、時間とコストのかかるものになっている。
そこで最近では、カーボンと樹脂を用いて射出成形で製造されるようになっている。
このセパレータは発生した電気を隣のセルに伝える電気伝導体でなくてはならない。
このためセパレータの材質は、電気をよく通し、同時にこの腐食しやすい雰囲気に耐える材料でなくてはならない。
また強力なボルト締めに耐えるように、強度も必要である。
現在ではカーボン材料が利用されているが、ステンレスやチタンなども検討されている。
現状の燃料電池の質量構成をみると、このセパレータが八〇%近くになっている。
将来、大量生産が行なわれるときには、質量の大きな部分がコストを決定する要素になる可能性がある。
このため、セパレータの材料の選択とコスト低下は重要な問題である。
【セルとスタック】ひとつのセルは、イオン交換膜、電極、セパレータからなっている。
セルをいくつも積層したものを燃料電池スタックと呼ぶ。
ちょうどスタックが一冊の本だとすると、本の一頁がひとつのセルということになる。
ただし、このセルは厚さがニー四ミリメートルである。
ひとつのセルが〇・五-〇・八ボルトの電圧を発生する。
積層したセル全体を、貫通するボルトとナットで締めて固定する。
ボルトをあらかじめ引っ張りナットを締める。
ボルトの強力な力で接触させたセパレータ面全体に電流が流れるようにする。
電流が大きいので、面全体を導体にして電気抵抗を減少させる。
セルを何枚も積層すると直列になり、高電圧を取り出せる。
ひとつのセルの電圧と積層したセルの数をかけると、最終的に得られる電圧になる。
例えば自動車の試作車の場合、四〇〇層×〇・七ボルトで二八〇ボルトを取り出しているセルの中心にイオン交換膜があり、水素極と酸素極(空気極)を区切っている。
イオン交換膜の面積に応じて電流が流れる。
面積あたりの電流密度は一平方センチあたり〇・三-〇・五アンペアである。
一枚の固体高分子膜は、白金触媒を載せた厚さ○∴ミリメートル以下の薄い高分子膜であり、電流が流れない場合には、理想的には両面に生じる電圧はI・二三ボルトであるが、実際にはこれより低く、さらに電流が流れると電圧が低下してゆく。
この関係はひとつのセルの特性曲線によって表されている。
横軸に電流密度をとり、縦軸にセル電圧をとると右下がりの曲線が得られる。
これは電流密度が小さければ電圧が高く、電流密度が大きくなるほど電圧が低下してゆくことを示している。
そして燃料電池としてのエネルギー効率は、動作点の電圧にのみ関係する。
動作点のセル電圧が高ければエネルギー効率も高い。
それゆえ、この特性曲線ができる限り、上側に来るようなセルを作ることが研究開発の目標になる。
またこの図を見ると、電流が小さいときに効率が高い、すなわち部分負荷では効率が高いという特性がわかる。
これは普通の電気機器にはない特性なので貴重である。
実際に利用する条件では、図中に示した動作点のように、セル電圧〇・五-〇・八ボルト、電流密度〇・三-〇・五アンペア/平方センチメートル程度であり、出力密度は三キロワット/平方メートル程度になる。
発電効串は四〇-六〇%であり、セル電圧が高ければ効率も高いという関係にある。
【プラチナ触媒】MEA(膜電極接合体)部分には、触媒として白金(プラチナ)やルテニウムが使用されている。
白金はIグラムあたり約二〇〇〇円の高価な金属である。
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